お骨のゆくえ
火葬大国ニッポンの技術
横田睦 著
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シリーズ・巻次 |
平凡社新書 51 |
出版年月 |
2000/07 |
ISBN |
9784582850512 |
Cコード・NDCコード |
0239 NDC 385 |
判型・ページ数 |
新書 232ページ |
在庫 |
現在品切中
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生前葬や撒骨、遺言ブームなど、自らが死を演出する今、本書は、遺体を骨にし葬る側の技術に注目。火葬大国ならではの進化をとげた「儀礼」と「技術」の関係を解きあかす。
遺言ブームや生前葬など、自分らしい葬送のあり方が模索される今、亡骸をお骨にし埋葬するまでの“弔いの技術”を私たちはどのくらい知っているだろうか。人と環境にやさしい火葬炉や、地震に強い墓地、巨大棺出現の謎から撒骨、霊柩車の最新事情まで、日本の葬送文化のこれからを新しい視点で読みとく。火葬大国ニッポンならではの進化を遂げた、お骨とお墓のテクノロジーを追う。
まえがき
第一章 誰にも負けないデッカイ墓をつくってみよう
1 「権利」と「自由」の旗の下に
自らの死を演出せねば、人生を完成させられない時代?
デッカイ墓をつくる前に/実例にみるデッカイ墓のスケール
2 あなたの仁徳天皇陵をつくるためには
「土を盛る」こと一つにも凝らされた工夫の数々/当時の手法で測量する
工期十六年、のべ作業員六百八十万人の大プロジェクト
技術者養成所としての陸墓造営現場
3 あなたのピラミッドをつくってみる
石材調達の難しさ/燦然と輝くできたてのピラミッド
石の切り出しと運搬は軽快に
忍耐の石積み作業/最終段階はアクロバティックな切り札を
4 デッカイ墓の本当の意味
デッカイ墓の墓守事情/モニュメント構築の狙い
お葬式の慎ましさ/なぜ弔われる側の「権利」と「自由」が叫ばれるのか
第二章 火葬技術大国ニッポンの光と影
1 かくして火葬場は進化した
遺骸はどう葬られてきたか?/最初は「野焼き」で一日掛かり
欧州の火葬推進はキリスト教へのアンチテーゼ
電気でこんがり?進む火葬技術 /「喫茶店みたい」なモダンな火葬場
2 火葬炉にみる技術立国ニッポン
嫌われる煙、嫌われる匂い/かくして煙突は消えた
火葬炉に求められる過酷な状況
心安らかな火葬のために――「台車式」と「前室」の誕生
夢の「完全自動制御」は実現するか
3 火葬場が直面している「課題」とはなにか
火葬場の苦しい台所事情/イギリス火葬事情――儀礼と技術の相関関係
阪神大震災との遭遇/近代火葬場行政の問題点
棺桶小話――遺骸のほかに燃えるもの
火葬場はダイオキシンを発生させているか?
火葬炉爆発―ペースメーカー爆弾
第三章 葬送の名脇役たち
1 お骨は一体どこにゆくのか
残された骨のゆくえ/貴金属は抽出されているのか?
撒骨をめぐる「俗説」の数々
「敷地五十坪、駅から徒歩五分。ただし骨付き」/寺壇制度の実相
宇宙から電脳空間まで、未来葬への誘い
2 エンバーミングとはなにか?
現代のミイラ葬/薬液注入の華麗なる技
ニッポン・エンバーミング事情と課題
3 火葬場へは霊柩車に乗って
東照宮陽明門型霊柩車/「死に場所」の変化と、新型車の出現
照明・音響設備は誰のため?/霊柩車の運行は、旅客運送か貨物運送か
追われる霊柩車、苦悩する専門業者
第四章 墓地が公園になった日
1 お墓「今昔物語」
土まんじゅうから霊園へ/墓石の誕生は城下町と共に
お墓は朽ちてゆくもの/鬼哭啾々たる欧州近代の埋葬事情
2 公園墓地の誕生
公共空間としての墓地/「見捨地」とはしておけぬ都市の墓地
かくて「多摩墓地」誕生せり公園式墓地がお墓を変えた
救国の英雄は墓地もまた救う/墓地を支え、墓地が育てた石材産業
3 墓地産業の隆盛
民営墓地の辿った道/墓石は生きている――石材加工の最新技術
マーケティング・ツールとしての「墓相学」/公営墓地の抱える矛盾
墓地の公共性とは一体なにか
第五章 葬送は進化するか?
1 上に延び、下に潜る現代の墓地
地上に地下に、墓地高層化の発想とは
昭和初期から存在していた立体墓地
「整理」のために生まれた特殊形態/お墓にかかる意外な費用
どんなに揺れても倒れない墓
2 納骨堂研究
「特殊納骨設備」は法律でどう定義されるか/家族墓に重なる海外の回廊墓地
日本の納骨堂の現状/管理する側からみた納骨堂の意義
3 葬送は進化するか?
「永代供養墓」は納骨堂の進化形か?/少子社会と墓の守り手
現代墓地に集いし者の寂しさ
さいごに
参考文献