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吉本隆明1968

鹿島 茂
シリーズ・巻次 平凡社新書  459
出版年月 2009/05
ISBN 9784582854596
Cコード・NDCコード 0291   NDC 910.268
判型・ページ数 新書   424ページ
在庫 在庫あり
この本の内容
目次
吉本隆明はいったい何と格闘し、いかにして「自立の思想」にたどり着いたのか。「永遠の吉本主義者」がその初期作品を精読、自らの「1968年」の意味を問い直し、吉本思想の核を捉えた渾身評論。 団塊世代を中心に多くの支持を獲得してきた吉本隆明。
独学によって自らを鍛え、比類なき思想を作り上げた
彼の根底にある倫理観とはいかなるものだったか――。
「永遠の吉本主義者」がその初期作品を再読、
自らの「一九六八年」の意味を問い直し、
吉本思想の核を捉えた著者渾身の評論。
吉本はいかに「自立の思想」にたどり着いたか。
「私小説的評論」を通して、その軌跡をたどる。
はじめに
第1章 「反・反スタ思想家」としての吉本隆明
スターリニズムという妖怪/「党生活者」をめぐる論争
「党生活者」における「技術主義」「利用主義」/吉本による「堕落論」
左翼の「最後の隠れ蓑」/「寛容思想」はいかにして生まれたか
『擬制の終焉』で私は吉本主義者になった/吉本の「偉さ」を説明するのが困難な理由
吉本が痛撃した異常なる「常識」/「反・反スタ思想家」としての吉本

第2章 日本的な「転向」の本質
日本的左翼の思考的ねじれはどこから来るのか/天皇陛下万歳とスターリン万歳
日本的転向の本質/佐野学、鍋山貞親の転向のモチーフ/封建的意識の残像
二つのヴィジョンの落差/無理やりの思考操作/佐野、鍋山がつきつけられたもの
彼らの転向はみっともないのか/「半日本人」と「無日本人」
現実社会をシャットアウト/「非転向」のほうこそが本質的な転向
吉本を吉本たらしめた最大の要因/中野重治の転向/『村の家』の父親が口にするセリフ
「日本封建性の優性遺伝」/「大衆の原像」にある父のイメージ

第3章 吉本にとってリアルだった芥川の死
吉本の社会的出自と思想の形成/自分の出自に「無理」をした芥川
「あらゆるチョッキを脱ぎすてた本音」/吉本による「私小説的な評論」
志賀直哉に対する劣等意識/「人生は一行のボオドレエルにも若かない」をめぐって
「半日本人」のサンプル/高村光太郎論を書いた二重の動機/「一元的な精神主義」

第4章 高村光太郎への違和感
大正末年生まれというポジション/吉本は敗戦をどう受け止めたか
文学的営為のすべての出発点/高村光太郎の秘密/高村光太郎の日記
「ブルジョワ息子」と「貧乏人の息子」という対比/吉本思想の核
多重的な父親殺しの意識化/「不可視の了解不可能性」

第5章 「了解不可能性」という壁
留学生の「落差問題」/普遍主義という解釈用具/普遍性から個別性への揺れ戻し
「第一の眼と第二の眼」/打倒すべき劣悪条件としての「家」
「家」中、ひとりの悪党なし/どうしようもない寂寥感の表現としてのデカダンス
永井荷風との比較/健康な肉体の生み出すデカダンス/「個人的環境の肯定」という選択「下町オリエンタリズム」/「世界性」と「孤絶性」/吉本の導き出した結論
「青くさき新緑の毒素」/智恵子との出会いにかいま見た「性のユートピア」
幻想との戯れ/実生活からの復讐/絵空事的な夫婦生活/もろくも崩れた調和
「危機」の本質/社会的動向への妙なシンクロ

第6章 高村はなぜ戦争礼賛詩を書いたか
昭和十二年の「格差社会」/「想像の共同体」が持つ精神の浄化作用
高村のメンタリティの回路/デカダンスとピューリティの対比
吉本少年にとっての二・二六事件/光太郎の「生理的」なピューリファイ願望
光太郎にとっての「唯一無二の解決策」/自然法的な理念の破綻
「生活」という社会の介入/高村への違和感の遠因/二つのターニング・ポイント
漱石の留学との比較/〈家〉からの離脱という難事/光太郎の出自への親近感

第7章 抒情詩と戦争詩のあいだ
どうしても避けて通れない問題/「四季」派の抒情詩の背景にあるもの
三好達治の先祖返り/時代を覆いつくした伝統回避制
社会的無関心から戦争讃歌への密通/根っこにある民衆特有の残忍さ
「四季」派的なものと対決する道/ボードレールを暗唱しているクマ公、ハチ公
「大衆の原像」論へのジャンピングボード/「盗っ人猛々しい」言説
擬ファシズム的扇動と擬民主主義的情緒/「日本庶民のひとりとして」という最高の武器吉本に切り返された岡本の反論

第8章 「大衆の原像」から「自立の思想」へ
吉本にとっての「知識人」と「大衆」/「知識人化」に伴う罪悪感
大衆迎合論者の大いなる誤解/二つの言語の間にある「捩れの構造」
戦後プラグマチズムがとらええなかったもの/大衆のナショナリズムは把握不可能か?
吉本が受けたショック/スターリニズムの欺瞞性/刻苦勉励の克己思想
四十年前のリアルな敗北感/「ナショナリズム」の裏面に付着したリアリズム
大衆のナショナリズムの現実喪失、現実乖離/理想化され、概念化された「村の風景」
農本ファシズムはなぜ軍事ファシズムに敗北したか
スターリニズムとウルトラ=ナショナリズム/ナショナリズムの「揚げ底」化

少し長めのあとがき
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