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増補 iPS細胞

増補 iPS細胞

世紀の発見が医療を変える

八代嘉美
シリーズ・巻次 平凡社新書  607
出版年月 2011/09
ISBN 9784582856071
Cコード・NDCコード 0247   NDC 491.11
判型・ページ数 新書   272ページ
在庫 在庫あり
定価814円(本体740円+税)

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この本の内容
目次
iPS細胞を作製した山中伸弥教授が、ノーベル生理学・医学賞を受賞! 発見当初は、再生医療への応用にはまだまだ課題が多いとされていたが、6年の歳月を経るなかで、いくつもの課題が解決されてきた。世界の医療と日本の産業を担うことが期待されているiPS細胞。本書は、この生命科学の粋を集めた技術のもっともわかりやすい入門書である。 2007年11月21日に、京都大学の山中伸弥教授らによって〈ヒトiPS細胞〉樹立成功が発表されてからこの間、iPS細胞をはじめとする幹細胞研究、再生医療研究ほど、めまぐるしい変化を遂げた領域はない。そのなかで、難病の研究やオーダーメード治療モデルの作成に向けて着々と進められているのが、基礎的な研究である。「がん化をいかに防ぐか」「より効率的な作製方法はあるのか」……次々と報告される新しい技術と知見の数々をわかりやすく、コンパクトにまとめる。さらには、政治・経済の分野への影響、そして、山中教授の提唱する〈オールジャパン〉体制の構築、メディアによる報道のあり方などについて、旧版の上梓から4年の間の成果と課題、再生医療の実現に向けての〈日本〉の取り組みを、大幅に増補して紹介する。
増補1 iPS細胞研究の現在
増補2 オールジャパン体制へ向けて
『増補 iPS細胞──世紀の発見が医療を変える』八代嘉美 著

はじめに

1章 “ES細胞”は生命の起源にさかのぼる──一つの細胞からさまざまな臓器へ
iPS細胞とES細胞/ES細胞は胚からはじまる/精子には子供の雛形がいる!? /胚はすべての細胞のもと/マウスES細胞の発見/キメラマウスの誕生/後戻りできない〈分化〉/さまざまな組織ができるのはなぜか?/組織の設計図は遺伝子/多様性は遺伝子の“オン/オフ”で決まる/ノックアウトマウスで機能を見つける/ヒトES細胞の誕生/それはヒトの命か!?

2章 細胞が先祖返りしないわけ──なぜ万能性は失われていくのか?
無限に増やせるES細胞/〈万能〉と〈多能〉はどう違うのか?/〈分化〉が後戻りしない仕組み──メチル化/多能性は〈分化〉のたびに小さくなる/クローン実験は仮説検証のために/〈分化〉をリセットする技術/体細胞クローンの誕生/クローン羊ドリーの衝撃/不健康なクローンたち

3章 なぜ身体は古びないのか?──幹細胞は眠り、そして目覚める
〈分化〉と〈複製〉をする力/幹細胞に特有の〈不等分裂〉/万能性から単能性へ/体性幹細胞の発見/ES細胞が〈未分化〉であることの条件/“冬眠する”幹細胞/ニッチ──幹細胞のねぐら/砂漠でダイヤモンドを探す/インクジェットと蛍光色素/

4章 再生はいつも身体で起きている
再生医療のイメージ/プラナリア、驚異の再生力のわけ/イモリ再生の仕組みは〈脱分化〉/欠落を補う仕組み/新陳代謝という再生/1秒に200万個の生産力──造血幹細胞/激しいストレスにも負けない再生力──小腸幹細胞/毛髪再生のカギ──毛幹細胞/筋肉は壊れてから強くなる──サテライト細胞/強烈に再生する肝細胞/肝臓の再生能力を超えた闇──肝硬変/眠りつづける神経幹細胞/体性幹細胞は自らを再生する

5章 再生医療の時代へ
自らのうちにある病/感染症の克服と臓器移植/肝臓を子供に移植すると子供サイズに/臓器移植と拒絶反応/移植は倫理的にも問題/ES細胞でも拒絶反応は起こる/クローン技術は医療に生かせるか?/研究はトライ&エラー/体性幹細胞の可能性/モラルハザード

6章 iPS細胞が誕生した!
倫理的な問題を超えるために/データベースが拓く新たな研究の形/ES細胞の多分化と増殖の力/分化の力を維持する遺伝子〈Nanog〉/24の遺伝子からどう絞るか?/四つの遺伝子に特定/iPS細胞でキメラマウスが誕生!/大競争時代へ/さらなる安全のために

7章 再生医療レースのはじまり
不自然な〈政治的胚〉/iPS細胞で血液の病気治療を試みる/神経細胞を再生する実験も/遺伝子導入に使われるウイルス/ヒトiPS細胞にマウスのウイルス/より安全なiPS細胞を目指して/レースははじまった/“オールジャパン”体制の確立に向けて/人間のためか、企業のためか/「研究ツール」としてのiPS細胞

8章 再生する力で人工臓器をつくる
立体的に培養する利点/古代エジプトの“人工臓器” /骨の再生で期待されるiPS細胞/進む心筋の再生研究/培養技術の進歩が細胞の機能を高める/日本ではじめて起きた臓器売買事件/人工透析に代わるハイブリッド臓器/〈テクノロジー〉を取り込む人間

終章 “知”がヒトを変えていく
“新しい世界”の到来/SFと生命科学/古代からはずれることのなかった〈箍〉/論理でタブーを越える/ヒロシマ以降0年/生命の設計図が手に入った時代/失われた生命力を取り戻すこと、とは/生命の謎を探りつづける科学者/テクノロジーが変える人間

増補1 iPS細胞研究の現在
大型動物で人の臓器ができる!? /生命観をゆるがす新しい生殖細胞研究/期待される二つの用途/遺伝子を「組み込む」危険性/遺伝子がゲノムに組み込まれない方法──初期化?/組み込んで、消し去る──初期化?/どの細胞からつくるか/初期化はどこまで達成しているのか?/腫瘍になりにくい細胞種はあるか?/疾患特異的iPS細胞/発症の道筋を明らかにする/基礎研究の充実を

増補2 オールジャパン体制へ向けて
研究基盤の整備/足を引っぱるES細胞研究の遅れ/産業化のために必要な戦略/細胞のリプログラミングとiPS細胞バンク/特許の取得と、これからの戦略/新たな発見とマスメディア/生殖の領域と倫理──ゆらぐ生命の「かたち」

あとがき
増補版へのあとがき
キーワード索引