知られざる親鸞
松尾 剛次 著
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シリーズ・巻次 |
平凡社新書 654 |
出版年月 |
2012/09 |
ISBN |
9784582856545 |
Cコード・NDCコード |
0215 NDC 188.72 |
判型・ページ数 |
新書 248ページ |
在庫 |
在庫あり
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実在が疑われていた正妻・玉日姫(たまひひめ)の骨壺が発掘された! 従来の定説をくつがえす発見と、伝承資料を丁寧に批判的に読み解くことで、親鸞の本当の姿に肉迫する!
確実な史料の少なさから、明治期には、その実在を疑われたこともあった親鸞。正妻・玉日姫も、同じ理由から、長く歴史から抹殺されていた。だが2012年春、玉日姫の墓所を発掘調査したところ、骨壷と骨片が発見される。それよって、玉日姫の実在の可能性は高まった。こうした発見とともに、著者は、実証主義的な歴史学では排除されてきた親鸞に関する豊富な史料を、丁寧な「史料批判」を通じて読み解いていく。それによって、これまで「親鸞の謎」とされてきたこと 兄弟すべてが僧侶となった謎、なぜ越後へ配流となったのか、法然教団での親鸞の立場、どうして玉日姫と結婚することになったのか、念仏僧としての親鸞 が次々と明らかになっていく。
従来の研究の限界を超えて、真実の親鸞に肉迫する、親鸞研究の最新の成果。
序章 新しい親鸞像をもとめて
○二つのスタイルと研究の流れ
厳しい実証主義の赤松説 「記録」を読み解く佐々木説 網野史学──実証主義を超える試み 再びの厳格な実証主義 平説
○親鸞伝承の再検証
『親鸞聖人正明伝』などの再発見 考古学的成果の利用
第一章 延暦寺での入室と出家
○官僧から遁世僧へ
中世僧侶のふたつの姿 官僧の実態 遁世僧と呼ばれた人々 民衆救済に関わる遁世僧 遁世僧出現の背景
○親鸞と慈円
親鸞は慈円の弟子だったか 「慈円の弟子」説への四つの疑義 平説への回答
○慈円のもとで出家
受戒の実相 親鸞の兄弟の出家の謎
第二章 親鸞誕生と家族
藤原氏につながる日野氏 父、有範の出家 源氏の流れをくむ母 二人の伯父 四人の兄弟
第三章 官僧としての親鸞
○延暦寺の堂僧として
十代の親鸞の修行 法隆寺への参籠と聖徳太子の夢告 聖徳太子廟とは 二十代の親鸞 大乗院での二度目の夢告
○なぜ念仏僧を志したのか
法然のもとへ 帰入と夢告の前後関係 六角堂参籠の理由 六角堂の夢告の内容 朝廷での歌合わせと権力の構造
第四章 遁世僧、親鸞 法然のもとで
○絶対的な師、法然
黒谷の法然 専修念仏ということ
○玉日姫との結婚
九条兼実の娘 玉日姫との結婚への疑義に答える 法然と兼実の念仏問答 女犯偈と結婚の因縁
○玉日姫の菩提寺と新発見
西岸寺の「住職次第」 田村光隆こと有阿弥 西岸寺と本願寺派 墓所の発掘と新発見 西岸寺の嘉永修復の事実
○親鸞と玉日姫の子孫
息子範意(即証房) 範意の孫、源尹
○恵信尼との結婚の真実
恵信尼の出自 出会いと結婚の経緯
○法然のもとでの親鸞の序列
第五章 建永の法難と越後配流
○法然一門への宗教弾圧
法難の背景 『愚管抄』に記された法難 関係者の処分
○親鸞の越後配流
親鸞処分の軽重 親鸞の越後での生活
○赦免と帰京
赦免後に向かった先 親鸞帰京の信憑性 中納言範光の斡旋
第六章 関東での布教
○勧進聖だったのか
善光寺勧進聖説 安城の御影 勧進聖説への疑問
○常陸国での活動
伊勢から下妻へ 越後と関東を往復 常陸稲田での布教 鹿島での布教 下野専修寺
○一切経校合への関与
『吾妻鏡』の記事 九条家の影
第七章 再帰京と『教行信証』
○なぜ親鸞は帰京したのか
三つの仮説 念仏者禁制ということ 将軍と酒を酌み交わす 箱根権現の饗応
○帰京後の親鸞
五条西洞院の禅坊 関東の弟子たちの来訪
第八章 善鸞義絶
○善鸞義絶をめぐって
義絶状の詳細 義絶状の信憑性 善鸞派遣と関東門徒の動揺
○関東に広まる戒律復興の波
律宗教団による戒律復興運動 常総地方への忍性の浸透 常陸稲田までも
○鎌倉幕府の転換
北条時頼の得宗専制政治 蘭渓道隆と戒律重視
第九章 親鸞の死
○九〇歳の大往生
死に際して瑞祥なきこと 親鸞を看取った人々
○親鸞の革新性とは何か
悪人正機説のオリジナリティ 法然の口伝
○在家仏教の祖、親鸞
僧侶の妻帯 個人宗教の自覚
親鸞略年譜