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大仏はなぜこれほど巨大なのか

大仏はなぜこれほど巨大なのか

権力者たちの宗教建築

建築家が各地の世界文化遺産を旅するなかで人類普遍の相を見出し、その根源に秘められた生の意味を探る。

武澤秀一
シリーズ・巻次 平凡社新書  756
出版年月 2014/11
ISBN 9784582857566
Cコード・NDCコード 0215   NDC 186.8
判型・ページ数 新書   264ページ
在庫 在庫あり
定価924円(本体840円+税)

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この本の内容
目次

大仏からインドのストゥーパ、ローマ神殿まで。世界の宗教建築はさまざまに存在するが、その不思議をシンプルに突き詰めてゆけば、洋の東西を問わず発見できる「真実」がある。建造物に込めた権力者たちの世界認識、そこには人類共通の謎を解く鍵が秘められていた──。宗教の枠を越えて存在した「世界創生」のイメージを各地の建造物から読み解く、まったく新しい試み。

はじめに

第Ⅰ部 大仏建立の謎を解く

第一章 なぜこれほどまでに巨大なのか
1 大仏と大仏殿
奈良の大仏/お顔はもっとまるかった?/世界最大級の木造建築
2 ルーツは中国の龍門石窟にあった
興味津々のあたらしいほとけ/雲岡石窟から龍門石窟へ
女帝が盧舎那大仏に/「皇帝即如来」/序文を寄せる女帝/遣唐使情報

第二章 なぜ大仏を建立したのか
1 未曾有の国難に抗して
前代未聞の巨大な鋳造仏/危険な賭け/旱魃がもたらした飢饉
頻発する大地震/天然痘の大流行
2 「責任はわれ一人にあり」
中国的「皇帝」観/天神地祇に祈ったが/長屋王のタタリか
3 大仏と諸国国分寺
国分寺建立の詔/平城京からの脱出
大仏建立の詔/建立を阻むもの/紫香楽での建立断念
4 聖武天皇の奈良
再び大仏建立へ/金の産出はほとけのおかげ/宇佐八幡神の入京
なぜ宇佐八幡神なのか/強行された大仏開眼/大仏建立がもたらした環境破壊

第三章 巨大ハスの無限抱擁
1 豊饒の大地から乾燥地帯へ
なぜ台座にハスが/『華厳経』のなかのハス
2 大仏の世界観
巨大蓮華世界の具現化/ハスの花びら一枚一枚に一大世界が!
華厳宇宙はマルチ‐バース

第四章 神とほとけの葛藤
1 大仏建立とアマテラス
なぜアマテラスではないのか/大仏建立をめぐるアマテラスとの微妙な関係
大行幸の謎/「アマテラスの本体は盧舎那仏」
2 アマテラスから盧舎那仏へ
帝王教育のなかで/『古事記』『日本書紀』の世界観
高天原から巨大蓮華世界へ/全国に花開く国分寺
3 天皇の宗教革命
仏教の革命/神々の革命
永続する宗教革命/密教に帰依する天皇

第Ⅱ部 インド、そしてローマへ

第一章 ストゥーパが語る宇宙創生
1 アショーカ王のインド
これが塔なのか/ストゥーパとは何か/仏教モニュメントの誕生
アショーカ王の帰依/アショーカ王の力
2 ストゥーパの意味するもの
舎利崇拝から仏像崇拝へ/〈柱〉の意味/〈卵〉の意味
生きている〈宇宙卵〉/〈卵〉と涅槃/宇宙は〈無〉からはじまった?
〈始原の山〉の誕生/〈柱〉と〈卵〉の合体
3 中国から日本へ
中国の塔/日本で復活した〈卵〉
ストゥーパへの先祖返り/舎利信仰から即身成仏へ

第二章 どのように礼拝するのか
1 中心を回る
プラダクシナー・パタ/〈中心〉に溶け込む
世界は永遠にあたらしい/回る作法は日本にも
2 中心と四方位
〈アクシス‐ムンディ〉/四方位の意味/四つの門──環境世界における定位

第三章 宇宙を体現するパンテオン
1 「建築家」皇帝ハドリアヌス
キリスト教公認以前のローマ/パンテオンの創建/旅する皇帝
2 パンテオンの神々
パンテオンという奇跡空間/秘術めいた関係
“人工洞窟”の中の宇宙と神々/建築空間から何が汲み取れるか?
射しこむ光の正体は/ミトラ教とキリスト教/ミトラ神は日本にも
そもそもミトラ神とは?/根づよいゼウス信仰
皇帝のための神殿から真の万神殿へ/光はさらに東方から
3 なぜ球体なのか
球体の意味と出自/ローマ人の発明/宇宙球体説の芽生え
ギリシャ神殿の原型/パンテオンは思想の“直訳”
4 ローマはギリシャに劣るのか
理想化されるギリシャ/近代を風靡したギリシャ/パルテノンを凌駕するパンテオン

第四章 中心と回転
1 中心に何があるか
ないことによってある中心/〈中心〉の定位
虚空に抜ける穴/雨の道・精液の道/秘儀に参加したハドリアヌス
共通する観念/祈りの道・煙の道
2 回る宇宙
宇宙をめぐる生気──〈プネウマ〉と〈プラーナ〉
揺るがぬ大地、回転する宇宙

おわりに

刊行の経緯ならびに謝辞
参考文献・読書案内