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下中彌三郎

下中彌三郎

アジア主義から世界連邦運動へ

「万人に教育を」という願いのもと、百科事典を作った下中。熱烈な愛国者で急進的な世界平和主義者でもあった、その人と思想に迫る。

中島 岳志
出版年月 2015/03
ISBN 9784582824742
Cコード・NDCコード 0023   NDC 289.1
判型・ページ数 4-6   384ページ
在庫 在庫あり
この本の内容
目次

戦前・戦中に熱烈な超国家主義者であった下中彌三郎は、なぜ戦後、絶対平和の立場を貫いたのか!?
「エタイの知れぬ怪物」と評された下中の生涯に迫る!

平凡社の創業、日本初の本格的百科事典の刊行、大正期の労働運動や、啓明会、池袋児童の村小学校での自由教育運動、アジア主義、世界連邦運動、絶対平和主義……。
数々の団体・運動を主宰し、日本の近現代史をめまぐるしく駆け抜けた下中は、時に「遊動円木」と揶揄されるほど、右派/左派に激しくぶれ、思想的一貫性のない日和見主義と考えられてきた。
しかし、いままで語られることのなかった下中の「一貫性」にこそ、現代の日本にも通じる危うさが含まれているのではないか。
超国家主義と平和主義が連続してつながる「ユートピア的楽土の追求」という地平を、下中の生涯を通じて描き出す。

「私が描きたいのは、多くの人たちが捉え損なってきた下中の一貫性である。彼を右派/左派という枠組みで捉えようとすると、必ず彼はそこから零れ落ちてしまう。結果、「無理論」で「ゴッチャ」な人物という評価が与えられてしまう。問題は下中にあるのではなく、下中を分析する枠組みにある。
下中は膨大な量の論考を発表し、数々の団体を組織している。その全体像を把握するだけでも、途方もない作業が必要になる。しかし、困難や労力を引き受けてでも、下中の生涯を明らかにすることには意味がある。彼の人生から普遍的な課題を抽出することが、本書の目的である。平凡社創業者の偉人伝や成功譚を書くつもりはない。(略)
本書は私にとって、下中彌三郎との闘いの軌跡である。下中の危うさを乗り越えることは、私の思想課題に直結する。(略)その作業は、不安定で見通しのきかない時代に生きる我々にとって、必要不可欠のものである。」(「はじめに」より)

はじめに

第一章 若き日
生い立ち/父の死/小さな労働者/若きリーダー/組合をつくる/小学校教員に/
田舎社会の改良/『小学校に於ける国語』の出版/最初の結婚/上京/ 
『児童新聞』と皇国ナショナリズム/天皇と平等/軍国主義/離婚/
『婦女新聞』の記者に/〈女性らしさ〉と〈女性の役割〉 /女性に大学教育は必要ない/
「覆面をぬげ」 /恋愛結婚礼賛/「子供至上論」 /日露戦争/石上露子「兵士」への絶賛/
悪魔万歳! !/大日本帝国の拡大/革命的文芸雑誌『ヒラメキ』 /
言論ジャーナリズムからの撤退/埼玉師範学校教諭

第二章 革新の時代
『や、此は便利だ』 /平凡社の誕生/満州での生活/啓明会の発足/老壮会への参加/
ブルジョア文化と民衆文化/「学習権の主張」と国家主義教育の排斥
/「教育ユートピア」を求めて/国際連盟への期待と「世界的国家」の樹立/
労働運動とメーデー/停滞と挫折/「万人労働」の思想/
「ガンヂは来るべき時代の最高の指導者だ」/関東大震災/
「児童の村小学校」と雑誌『教育の世紀』/「神の摂理」に従属せよ/「学校は要らない」/
修身教育は必要ない/軍備をすべて捨てよ/日本帝国主義批判としてのアジア主義/
「婦人参政には反対です」/非政党同盟──普通選挙の限界/
農村ユートピア── 「都会は人類の墓場だ」/平凡社の本格始動

第三章 皇国日本による世界統一
愛国勤労党/無産政党の合同を/起死回生の『大百科事典』/下中新党の立ち上げ/
政党運動の挫折/天皇政治による「無私の独裁」/大亜細亜協会の設立/
皇国日本には世界を統一する使命がある/ 『維新を語る』の出版──第二の維新を目指して/
軍人によるラディカルな現状打破/天皇機関説の排撃/「綽名返上──思想巡礼者の告白」/
切迫感と苛立ち/『すめらみこと信仰──万教帰一の最高具体標識』/日中戦争と中国工作/
「蘭印を確保せよ」 ──大東亜共栄圏の確立/大東亜戦争の勃発/
「天皇帰一による億兆一心」/「死んで生きる」

第四章 世界連邦・非武装中立・平和憲法
東京裁判と公職追放/世界連邦運動への参画/アジア主義は終わらない/
パール判事の再来日/広島での第一回世界連邦アジア会議/
「地上天国は実現される」 ──一九七〇年に世界連邦実現を/
ビキニ環礁の「死の灰」/「丸裸日本」 ──非武装中立と平和憲法/
「アジアの番頭役」 /生命体としての世界連邦/インド訪問と宗教世界会議/
「神ながら信仰」による「万教帰一」/「国連よ! もう一歩前へ」/
世界平和アピール七人委員会/中国は地上の楽園/岸首相の外遊に同行/
日米安保改定反対── 「なるべく早くアメリカの兵隊に帰つてもらいたい」/
世界連邦運動の停滞と分裂/平和憲法と八紘一宇/最後の夜

おわりに
あとがき
下中彌三郎年譜
引用・参考文献
  • 今日の平凡社
  • カスタム出版
  • 入れサービス