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女性画家たちの戦争

女性画家たちの戦争

第二次世界大戦中、女性画家は男性画家と同様に戦争の光景を描いた。当時を生きた長谷川春子、桂ゆき、三岸節子などの足跡を紹介。

吉良 智子
シリーズ・巻次 平凡社新書  780
出版年月 2015/07
ISBN 9784582857801
Cコード・NDCコード 0271   NDC 721.9
判型・ページ数 新書   216ページ
在庫 現在品切中
定価924円(本体840円+税)

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この本の内容
目次

第二次世界大戦中、我が国では戦争画が制作された。その大半は藤田嗣治、宮本三郎、小磯良平ら昭和を代表する男性画家による「作戦記録画」だ。
では女性画家たちはどんな作品を描いていたのだろうか。これまで語られる機会が少なかったのだが、彼女らも戦争画を残している。本書は長谷川春子、桂ゆき(ユキ子)、三岸節子、そして女性画家集団「女流美術家奉公隊」の活動や作品を紹介するとともに、彼女らによる超大作《大東亜戦皇国婦女皆働之図》を紹介する。

◎書評/紹介
asahi_20150816.pdf

はじめに

第1章 昭和の画壇事情

1、大正末期から昭和初期の画壇
文展VS在野団体/新しい潮流/帝国美術院改組と国家統制
2、女性画家と画壇
女性画家グループの結成/朱葉会/日本画の女性グループ/女艸会/七彩会/彼女たの「励まし合い」/文学におけるネットワーク/女性画家の「均質性」/プロレタリア美術運動と女性/画家と経済的自立/女性画家と前衛美術
3、美術教育
東京美術学校と女子美術学校/教育内容における「差異化」
4、女性画家と画題
「ふさわしい」画題/あまり描かなかったもの
5、社会は女性画家をどう見ていたか
「洋画」を学ぶことの困難/彼女らへの関心と批評/作品と「女性らしさ」
/「女性特有」への期待/評価の変化


第2章 開戦、女性画家たちの行動
 
1、 戦争と画家
日中戦争から太平洋戦争へ/洋画家の危機感/戦争と画家団体/「銃後」の図像/「祈る女性」と「闘う兵士=男性」
2、 女性と戦争
女性文化人の動き/労働への参加
3、 女流美術家奉公隊
女流美術家奉公隊の結成/「戦ふ少年兵」展/母たちへのアピール
戦時の評価/勤労奉仕も行なう奉公隊
4《大東亜戦皇国婦女皆働之図》
《大東亜戦皇国婦女皆働之図》とは/前衛手法の取り入れ/描かれたモティーフ
描かれた職業と描かれなかった職業/イメージソース/描かれた四十二の労働
「銃後」に囲い込まれた女性画家/男性不在の世界観

第3章 彼女らの足跡

1、長谷川春子
恵まれた環境と長姉時雨の協力/『女人芸術』での活躍/特派員として中国へ
女流美術家奉公隊の結成/画壇から身を引く/《皆働之図》を守るという信念
コラム:元奉公隊員の証言1:木下寿々子さん
2、桂ゆき(ユキ子)
洋画と前衛美術/コラージュ技法/「笑い」とアイロニカルな視点/
奉公隊との関わり/社会的なテーマに取り組んだ戦後
コラム:元奉公隊員の証言2:高木(渋谷)静子さん
3、三岸節子
反骨精神のめばえ/「ガラスの天井」/「女性らしさ」への反発/パートナーとの相克/三人の子を持つシングルマザー/分かれ道/連帯からの離脱
コラム:元奉公隊員の証言3:石村五十子さん

第4章 敗戦、画家たちのその後

1、「戦争と美術」論争
2、戦争画の戦後
戦争画の接収と「発見」/《皆働之図》の戦後
3、 女流画家協会と女流美術家協会
4、 女性画家と戦後
戦後改革と女性/法的な「平等」と見えづらくなったもの

おわりに 
主要参考文献
関連年表

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河田明久 監修