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乱世の政治論 愚管抄を読む

乱世の政治論 愚管抄を読む

「愚管抄」は歴史の道理=法則を探る歴史理論書ではなく自らの政治理念の崩壊を目の当たりにした政治論である。敗北の政治思想。

長崎 浩
シリーズ・巻次 平凡社新書  815
出版年月 2016/06
ISBN 9784582858150
Cコード・NDCコード 0210   NDC 121.4
判型・ページ数 新書   224ページ
在庫 在庫あり
定価880円(本体800円+税)

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この本の内容
目次

 

乱世を生きた知識人・慈円の書いた『愚管抄』は、「武者の世」への転換期の、歴史の道理を明らめようとした歴史理論書とされてきた。しかしこの書物がふりまわす「道理」は融通無碍に過ぎ、なんらかの原理であるには堪えない。語られているのは歴史理論ではなく、藤原氏九条家の一員にして天台座主が信奉する政治理念であり、その目の前での崩落の様、敗北の政治思想である。『叛乱論』の著者が慈円『愚管抄』にもう一つの政治を読み取る!

 

《目次》

はじめに

第一章 上皇をお諫め申す──承久の乱前夜
1 君の不心得は由々しき大事
2 こはいかにと驚き覚めさせ給へ
3 この僻事あるまじき也
4 道理をだにも心得取らせ給へ

第二章 摂関政治は神々の約束──君臣魚水合体の理念
1 国王は天皇家、摂籙は藤原氏
2 魚水合体の政治理念
3 理念の曲芸──北野の御事
4 血脈合体の政治
5 摂関家専権の論理
6 慈円の政治世界
7 世の中おぼつかなく

第三章 日本国の乱逆──保元平治の乱
1 世も末の政治
2 上皇と近臣ども
3 四分五裂する君と臣
4 君と君、臣と臣の戦い──保元の乱
5 義朝は親の首切りつ
6 院近臣の内ゲバ──平治の乱
7 源平の前哨戦

第四章 摂関家の挽歌──武者の世を追認する
1 摂?臣の御事などは議に及ばず
2 なお続く朝廷社会の暗闘
3 武者の世に茫然自失する
4 京の都、酸鼻の極み
5 武家こそが神器宝剣の代わり
6 朝廷社会の「外部」としての政治
7 九条家の挽歌

第五章 王法仏法は牛角のごとく──権門化する仏法
1 王法仏法相依の政治
2 政治概念としての仏法
3 仏法は理念たりえず
4 仏法は加持祈祷
5 外部の力、怨霊・悪霊・霊鬼
6 法然往生、さる確かなこともなし
7 知識人、慈円

第六章 敗北の政治思想──乱世と知識人
1 政治はあるのか
2 「世の中」という政治
3 これぞ奇謀の定石
4 現実政治に規範はあるのか
5 アリストテレスと聖徳太子を参照する
6 「失せゆく政治」という政治思想
7 立ち現れるもう一つの政治

終章 諫言ふたたび

あとがき

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