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漱石と煎茶

漱石と煎茶 新刊

漱石が『草枕』で近世文人の風雅な趣味「煎茶」をことさら称揚するのはなぜか。中国・日本の煎茶史を通して新しい過激な漱石を発見!

小川 後楽
シリーズ・巻次 平凡社新書  823
出版年月 2017/01
ISBN 9784582858235
Cコード・NDCコード 0291   NDC 910.26
判型・ページ数 新書   232ページ
在庫 在庫あり
この本の内容
目次

 

漱石は『草枕』で、いまはほぼ忘れられた風流韻事「煎茶」をみごとに描き出している。近世文人が愛好した「煎茶」は、日本で独自に発展した茶の湯とは別の茶事で、陸羽以来の中国の茶の正系を色濃く継いでいる。その煎茶の歴史がはぐくんだ精神と漱石の思想は、じつは深く重なり合う。そしてその視角から読みなおすとき、『草枕』は明確な反戦小説であり、漱石が「維新の志士の如き」過激な文学者であることが見えてくる。漱石像の刷新!

 

序章
『草枕』を愛する二人/知っているつもりの漱石/猫の死/滑稽と諷刺
「太平」と「癇癪」

Ⅰ 『草枕』と煎茶
1 『草枕』を読みなおす
「煎茶」からの接近/『草枕』のおさらい/「文人」との親近/『草枕』論の少なさ
2 『草枕』と煎茶
茶を振る舞う/「煎茶」──近世文人の風雅な遊び/「煎茶」対「茶の湯」
漱石の茶の湯批判
3 小川可進の煎茶
『草枕』における煎茶場面の位置/小川可進とその煎茶/可進の功績
可進の煎茶席につらなる人々

Ⅱ 「煎茶」精神の歴史
1 茶と文学──唐代「茶道三友」
煎茶の誕生/陸羽と皎然/唐王朝と煎茶
2 盧仝の煎茶精神
盧仝の煎茶と風刺精神/「月蝕詩」/陸羽のもう一面
3 王朝の伝習としての茶
平安王朝に息づく唐代の煎茶/日本最古の茶会記録
4 近世の煎茶精神──尊王と反体制
抹茶に変わる葉茶の到来/煎茶将来についてのさまざまな説/後水尾院と隠元
道澄の「煎茶」主張とその影響/売茶翁──黄檗僧から一服一銭へ
売茶翁の名、海内にかまびすし/売茶翁の有心

Ⅲ 漱石の生涯、学問、思想
1 歴史と文学
王朝への忠義・忠節/「左国史漢」への傾倒/カーライルへの想い
2 民を済う思想
弱者への視線/子規への二銭郵券四枚張の長談義/「細民」への配慮
3 沸騰する脳漿
英文科時代の漱石/沸騰せる脳漿──日清戦争
両頭の蛇を切断する──変節者への怒り/文字の奇禍を買う/陸游への想い
4 熊本と煎茶
松山行き・松山落ちの真実/熊本でのレッスン/案山子と自由民権運動の別天地
煎茶への関心の深まり/煎茶の部屋
5 狂気と探偵嫌い
英国留学「夏目狂せり」/探偵恐怖症/『猫』のなかの探偵
『草枕』に見る探偵/生涯にわたる執拗な探偵罵倒

Ⅳ 『草枕』の思想
1 方法から、時代から
『草枕』の諷喩/明治ノ三十九年ニハ過去ナシ/『草枕』執筆の時代背景
2 『趣味の遺伝』の戦争
『趣味の遺伝』の戦争/詩的に想像された戦場
3 『草枕』の思想
『草枕』の終章に見る現実/革命の危機/「憐れ」の完成
「維新の志士の如き烈しい精神で文学をやって見たい」

終章

付記
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