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「おもてなし」という残酷社会 新刊

過剰・感情労働とどう向き合うか

行き過ぎた「おもてなし」(接客)の精神が現代に働く私たちの多くを追い詰めている。その社会的背景や実例を示し、対処法を考える。

榎本 博明
シリーズ・巻次 平凡社新書  839
出版年月 2017/03
ISBN 9784582858396
Cコード・NDCコード 0236   NDC 361.4
判型・ページ数 新書   208ページ
在庫 在庫あり
この本の内容
目次

 

私たち日本人は、人と人との「間柄」を配慮しながら生きてきた。だからこそ、接客の場で心地よい「おもてなし」がなされてきたのだ。しかし、もともと丁寧な対応をし、信頼関係を築いてきた場に、欧米の「顧客満足(CS)」といった概念が取り入れられ、従業員は過剰な「お客様扱い」を強いられるようになった。そして、客は過剰な接客を当然とみなし、どんどんわがままになっていく――。

過酷なストレス社会を生き抜くために、その社会的背景を理解し、対処法を考える。

《目次》
はじめに──なくならない過労死

第1章 なぜ、過剰な「お客様扱い」が当たり前となったのか
「顧客満足(CS)度」が日本人の心を壊す
オリンピックに向けてもてはやされる「『おもてなし』の精神」
お互いに気遣いをし合う、心地よい関係が崩れつつある
「間柄」と「自己中心」という文化の違い
日本語の曖昧な表現が意味するもの
「すみません」に込められた言葉の意味
困っているのに笑顔なのは、なぜか
「はい」は必ずしも「イエス」ではない
自己主張が苦手なわけ
遠慮するのはなぜか
なぜ、共感性が高いのか
間柄としての自己を生きる
謝罪が責任に直結しない「お互い様」という考え方
「お客様扱い」が「お互い様」の精神を崩壊させた

第2章 あらゆる職業が感情のコントロールを強いられる社会へ
一方的な奉仕を強いられる社会
感情労働に必要とされる表層演技と深層演技
「こう感じるべき」という感情労働の規則
感情の抑制が大きなストレスを生む
感情のコントロールを失わせるバーンアウトという現象
だれもがごく自然に気遣いをしてきたのだが……
そして、異常なまでの感情労働を強いられる社会となった
「お客様第一」という美徳も行き過ぎると……
今や、接客業だけではない
ネット社会によって、ますます感情労働を強いられる
苦情処理が事業の成否を左右するというのだが……
本来の仕事より苦情処理に気を遣う時代
人員削減が私たちの心をさらに追いこむ
人間味が失われていく職場
総活躍社会というトリック

第3章 「お客様は神様」という発想が働く現場を過酷にする
心の不調を抱える人たち
高まりをみせる労働問題が絡む自殺比率
過重な仕事の負荷と「お客様扱い」の関係
増幅するお客様意識
四六時中、感情労働を強いられる対人援助職
過酷な教育現場の状況とは
教育現場にさえも「顧客満足」重視が……
過酷な保育現場の状況
思いがけない苦情が、保育者をさらに苦しめる
医療事務従事者ほど理不尽な対応を迫られる医療現場
看護師に求められる特有の働き方
看護師の感情規則
バーンアウトや離職が多い看護職の現場
あまりにも過酷な介護の現場
非常に難しい感情コントロールが求められる介護職員
理不尽なクレームにも耐える車掌や駅員
とりわけ過酷なコールセンター業務
業者という立場の嘆き

第4章 職場内すらも抑圧された感情が渦巻く場に
横暴な上司に対して、ひたすら我慢する部下
上司を傷つけないように気遣いも必要なんて……
上司や先輩のアドバイスにさえ、「上から目線」と反発
若手社員はお客様なのか
採用面接、さらには新入社員にも気を遣うブラック恐怖症の企業
感情を押し殺すのは非正規社員だけではない

第5章 過剰・感情労働時代のストレスとの付きあい方
客となってストレスを発散する社会
枠組みを変えるリフレーミング
ひとりで抱え込まないで、共感を得ること
自己開示できる場をもつ
腹が立つこと、ムシャクシャすることをノートに書き留める
注目されるレジリエンスという心の性質
どうすれば、レジリエンスを高めることができるか
肯定的な意味づけの力を高める
感情労働の一要素である「探索的理解」
ある程度の自律性をもたせるような仕事のやり方を模索する
日常の生活を充実させる
「おもてなし」の勘違いに気づく

あとがき

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