幽霊。その存在は生きている者にとっては得体のしれない不気味なものである。しかし古来、人びとは幽霊を絵として描き続けた。なぜだろうか。その理由のひとつに、幽霊という存在自体がわれわれ人間にとって特別なものであったに違いないからだろう。
本書ではよく知られている作品から地域で大切にされてきたものまで幅広い視点で選んだ幽霊画を紹介し、幽霊画が日本全体で親しまれてきたということを示したい。また、死後の世界を描いた地獄絵や摩訶不思議な光景が展開される絵巻なども取り上げ、冥界という空間がわれわれ日本人にとってどのような存在だったのかについても、多角的な方向からアプローチする。
【執筆者】
安村敏信(美術史家・北斎館館長)
堤邦彦(京都精華大学教授)
奥田敦子(すみだ北斎美術館主任学芸員)
鈴木堅弘(京都精華大学特別研究員)
東雅夫(アンソロジスト)
寺崎紗穂(シンガー・ソングライター、エッセイスト)
松井冬子(画家)
鴻崎正武(画家)
平井千香子(画家)
【構成】
「幽霊画」宣言
1、幽霊画の世界へようこそ
2、絵巻の中の“あやかし”
3、骸骨ワールド
◎伊藤晴雨肉筆幽霊画 全生庵所蔵「柳家小さんコレクション」
◎江戸の地獄絵と閻魔信仰
◎みちのく幽霊画紀行 呪具としての死者図像
◎山姥をたずねて
◎あの世を感じるブックガイド
◎“あやかし”を描いた絵師たち
◎現代作家による「あやかし画」
◎幽霊画で寺院探訪