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移民たちの「満州」

移民たちの「満州」

満蒙開拓団の虚と実

昭和恐慌下から続く農村疲弊の解決を狙いとして遂行された満蒙開拓移民政策。体験者から託された資料を基に等身大の満州を描く。

二松 啓紀
シリーズ・巻次 平凡社新書  782
出版年月 2015/07
ISBN 9784582857825
Cコード・NDCコード 0222   NDC 222.077
判型・ページ数 新書   280ページ
在庫 在庫あり
定価924円(本体840円+税)

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この本の内容
目次

満州事変以降、政府の大陸政策、昭和恐慌下における農村更生策の一環として遂行された満州移民政策。一九三二年から敗戦直前に至るまで送出は続き、全国の自治体から二七万人(敗戦時)が大陸へ渡った。後に中国残留日本人やシベリア抑留といった問題を引き起こす満州移民とはいったい何だったのか。
満蒙開拓団の体験者から託された資料を軸に描かれる“等身大の満州”。

◎書評/紹介
asahi_20150809.pdf


序章 最も身近な戦争体験としての「満州」
消えた同級生/戦争を知らない世代の「戦争」体験/満蒙開拓団の資料を託されて

第一章 満州国の誕生と大量移民の幕開け
満州事変から満州国誕生へ/五・一五事件と満州移民/日満議定書と平頂山事件
第一次武装移民とリットン調査団/第二次武装移民と依蘭事変
「満州移民のトーチカ」高橋是清の死/大量送出の時代へ

第二章 日中戦争と満州移民
満蒙開拓青少年義勇軍/移民の募集担当だった水上勉/教員が教え子を戦場へ
少年義勇軍の悲劇/「分村移民は精神運動」/分村計画の先駆け、宮城県南郷村
「優良村」だった山形県大和村/分村移民、三つのモデル/「移民」から「開拓民」へ

第三章 模範村「大日向村」の誕生
『蒼氓』で描かれた海外移民/ブラジル移民から満州移民へ/「名ばかりの暗い日陰の村」
農村問題の解決策として/現実の大日向村/小説に描かれなかった疑獄事件
分村移民のその後/島木健作の見た大日向村/「時局便乗小説」

第四章 形骸化する満蒙開拓事業
移民に対する負のイメージ/立ち消えた京都府の分村移民計画
京都府の視察団が満州大日向村へ/「国策」と「天皇」を御旗に
数合わせに終始した机上の計画/「成功」を装う満州天田郷建設
良識ある反対派を駆逐/「満人」に対する優越感/集落の割り当てから個人・家族選抜へ
継続こそが目的に/京都府内唯一の「模範」/波紋が大きかった高知県

第五章 戦争末期の満州と満蒙開拓団
都市部の転業者開拓団/天田郷開拓団は新聞でいかに報じられたか
京都市の平安郷開拓団/「満州に来るな」/戦禍の影すらない平和な日々
ソ連参戦と逃げ出した日本人官僚/開拓地を玉砕覚悟で死守すべし
玉音放送と松花江の惨劇/敗戦後も戦禍が続く

第六章 日本人の大量難民と収容所
傀儡帝国の崩壊/麻山の集団自決と葛根廟の大量虐殺
対照的な運命をたどった二つの開拓団/ハルビンの花園収容所
満州で最大規模だった新香坊収容所/過半数が死亡した伊漢通収容所
一五万人の難民が押し寄せた奉天/都市の居留民が見た難民収容所

第七章 引き揚げと戦後開拓──満州の記憶
東西冷戦が反映した引揚事業/日本人帰国の報に募る焦燥感
封じ込められた満州の記憶/日本人女性のための「秘密病院」
満蒙開拓の焼き直しだった戦後開拓/満州引揚者が再び京都の入植地へ
軽井沢の「大日向」/大日向を詠んだ御製/加藤完治と橋本傳左衛門のその後

第八章 一八歳のシベリア抑留──もう一つの収容所
消えた「アジア最強」の関東軍/史上最大の拉致事件/シベリアの強制収容所
初めての冬に三万人が死亡/帰国のための思想改造/蒼く澄み切った舞鶴の海

終章 消えない「満州」の残像
満州移民とは何だったのか/地方の裁量と責任/混在する加害と被害
今も続く「満州」