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南方熊楠と宮沢賢治

南方熊楠と宮沢賢治

日本的スピリチュアリティの系譜

日本近代の知的水脈において燦然と輝く2つの個性を、表現・思想・人間関係のすべてにおいて比較・対照する、類例のない斬新な考察。

鎌田 東二
シリーズ・巻次 平凡社新書  933
出版年月 2020/02
ISBN 9784582859331
Cコード・NDCコード 0239   NDC 380
判型・ページ数 新書   304ページ
在庫 在庫あり
定価1,078円(本体980円+税)

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この本の内容
目次

明治・大正期、日本では近代国家形成に伴う独特の解放感が生まれていた。宗教や伝統社会への自由な問い直し。そして、自然と人間を繋ぐ神秘の探求。そのなかで、ひときわ輝きを放つ二つの知的巨星があった。

和歌山・熊野の地で独自の民俗学を展開した南方熊楠。

岩手・花巻にあって農本主義的表現を志した宮沢賢治。

彼らがそれぞれに探求した「世界の真実」の、共通点と違いは何だろうか。

自然/人間精神の総合的な智=「生態智」を見抜かんとし、当時最新の西洋思想をも援用して挑んだ二つの知性とは。日本のスピリチュアリズムにおける最高到達点の秘密を探る!

序章 二人のM・K――横一面男と縦一筋男
横一面男・南方熊楠/縦一筋男・宮沢賢治/二人のM・K

第一章 観察と聴取――五感の彼方へ・熊楠と賢治の超感覚
名と不思議/観察と聴取――その分子的解像/第四次延長と認識/わたくしという現象/透明な幽霊の複合体と複心/或る心理学的な仕事と実験/宇宙感情とすきとおったたべもの/宇宙意志と多元意識/魂遊あるいは体外離脱体験/五感の彼方へ

第二章 真言密教と法華経――二人のM・Kの宗教世界
「キ印」や「きちがひ」にならないための「がいねん化」/魔の存在/「高等遊民」の道楽者/独覚と修羅の意識/熊楠の自己認識としてのトーテミズム/賢治の菜食主義――保阪嘉内への書簡と『ビヂテリアン大祭』/「親鸞僧上の肉食」に対する「仏弟子」の反論と輪廻転生/賢治の「白骨の御文」と熊楠の「大日和讃」/熊楠仏教と賢治仏教/法華経という奇想と希望

第三章 一九一〇年の熊楠と賢治――ハレー彗星インパクトと変態心理学
一九一〇年五月二十二日・二十四日・二十五日の南方熊楠/一九一〇年六月~八月の南方熊楠と柳田國男/一九一〇年と石川啄木「時代閉塞の現状」/柳田國男の試み/一九一〇年問題――ハレー彗星インパクト/保阪嘉内とハレー彗星/一九一〇年の福来友吉と柳宗悦/宮沢賢治の心理学/南方熊楠の「大逆事件」と「千里眼」事件/一九一〇年のエコロジー(生態学)とサイコロジー(心理学)と民俗学――熊楠の場合/南方熊楠の「永遠の今」

第四章 妖怪学の探究と表現
井上円了の心理学と妖怪学から始まる/宮沢賢治の妖精物語/『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』の妖精物語/南方熊楠の妖怪民俗学/

終章 生態智を生きる道
天台本覚思想と二人のM・K/博物学的生命主義と法華銀河生命主義

引用・参考文献
あとがき

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