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こんな日弁連に誰がした?

こんな日弁連に誰がした?

小林正啓
シリーズ・巻次 平凡社新書  509
出版年月 2010/02
ISBN 9784582855098
Cコード・NDCコード 0232   NDC 327.1
判型・ページ数 新書   256ページ
在庫 現在品切中
定価836円(本体760円+税)

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この本の内容
目次
「弁護士の就職難」はなぜ起きたのか? エリート集団「日弁連」は何を間違えたのか? 冷戦、バブル崩壊、司法改革──法曹界の変遷をたどりながら、衰弱する組織と期待される弁護士像を描く。 司法試験合格者数が、500人→3000人と大増員されたのに、なぜか仕事はまったく増えず、新人弁護士には就職する事務所すらない人までいる。合格者を3000人に増やすはずなのに、うかるのは2000人わずかに超える程度。そして、大金を出して法科大学院で学んでも、試験に受かるのは一部のみ。
なぜ、こんな“ちぐはぐ”なことになってしまったのか?
それまで、日弁連のことなど「全然知らなかった」という著者が、どうにも納得のいかないことの多さに、みずから司法と日弁連、弁護士の歴史をひもとき、はじめて「日弁連の姿」を明らかにした。東西冷戦、バブル崩壊、司法改革といった戦後日本の歴史の流れのなかで、日弁連、司法、弁護士は何を求め、何に挫折してきたのか!? 法曹の戦後史と、これからあるべき日本の弁護士像を描き出す。
『こんな日弁連に誰がした?』 小林正啓著

第1章 なぜ日弁連と裁判所は仲が悪いのか?
○「司法ゾーン」の片隅で
弁護士会館は社会を照らすか/ダルマ落としのダルマ/日弁連の二つの顔
○日弁連は左翼集団か?
強制加入団体/団塊の世代と「族」弁護士
○安田好弘弁護士のバッジを奪えるのは誰か?
光市事件と松本サリン事件/弁護士会の聖域/弁護士自治に対する批判
○東西冷戦と弁護士と裁判所
敗戦から東西冷戦へ/司法への政治介入/裁判所内の謀略/「入れ子」構造の権力闘争
○左翼系裁判官に対する弾圧
宮本康昭判事補再任拒否事件/「四分の虫」にも五分の魂/「右傾化」する裁判所と「左傾化」する日弁連

第2章 日弁連が分裂する中、司法改革が始まる
○日弁連の分裂
高度経済成長と外国弁護士問題/バブル景気とビジネスローヤーの勃興/坂本堤弁護士の生活
○法曹人口問題の発生
裁判官・検事志望者の激減/利益よりもメンツを取った日弁連/人権派弁護士のビジネスモデル/冷戦終結と日弁連の分裂
○ミスター最高裁判所、矢口洪一
裁判官の悲願/なぜ待遇改善が必要なのか/最高裁判所事務総局の創設/「反動司法の象徴」から「司法民主化の先駆け」へ/公害裁判での被害者救済/矢口洪一は変節したのか/裁判所の政策形成機能
○平成の鬼平、中坊公平
中坊公平の「司法改革」/宮本康昭もと判事補の抜擢/5年間の時間稼ぎ

第3章 日弁連、最大の失敗
○1994年12月21日臨時総会
師走に日弁連総会を開催するということ/臨時総会招集にいたる経緯/「増員反対」の土屋公献会長が当選/公約違反
○陰謀劇
ヤジと怒号に包まれたロングラン総会/関連決議案/奇妙な展開/陰謀劇の筋書き/関連決議がもたらしたもの
○法曹人口大幅増員を要求した勢力
経済界は大幅増員を望んでいたのか/「年次要望書」は米国オリジナルか?

第4章 迷走と抵抗
○土屋公献執行部の迷走
日弁連存亡の危機/歴史の隠蔽/嫌われ軽蔑された日弁連
○日弁連の方向転換
あたらしい指導者の登場/「自由と正義」表紙の差し替え/土屋公献会長を糾弾/日弁連の再分裂
○司法修習期間をめぐる攻防
鬼追明夫新会長の使命/弁護士の「意識改革」/したたかな抵抗/法曹養成と国家予算/鬼追明夫執行部の失敗/大増員へのうねり

第5章 法科大学院構想
○法科大学院構想が実現するまで
胎動/三位一体の成長/全大学体制がもたらした「乱立」
○日弁連と法科大学院構想
日弁連の取り組み/遅れてきた青春/司法研修所の実務教育/成文法主義と不文法主義/裁判員制度について/法制度と法文化
○教育改革問題としての法科大学院構想
法曹養成制度の問題点/偏差値カースト制度と法科大学院構想/熱狂の対象

第6章 法曹一元と日弁連の熱狂
八紘一宇と法曹一元
○法曹一元論の歴史
臨司意見書/矢口洪一再登場/全裁判官失職の危機
○法曹一元と弁護士人口大増員
法曹一元と法科大学院/「経済的自立論」と「超人思想」/司法研修所の廃止
○法曹一元論の致命的な欠陥
革命的法曹一元論/鼻持ちならないエリート意識/裁判官を志望する弁護士がいない?

第7章 決戦、そして敗北
○日弁連の命運を託す
中坊公平再登板/司法制度改革審議会/最後の戦場/敗戦処理投手
○司法試験合格者数、年3000人へ
3000人への始動/内閣特別顧問就任/佐藤・久保井会談/3000人内定/「フランス並み」の詭弁
○法曹一元をめぐる攻防
便所のような臭いニオイ/激論/冷戦の亡霊/法曹一元論の敗北

第8章 熱狂の顛末とこれから
日弁連はなぜ負けたのか/矢口洪一はなぜ法曹一元を主張したのか/中坊公平弁護士の失脚/宮川光治弁護士の責任/矢口洪一の遺言

エピローグ──これからの弁護士会と弁護士
司法試験合格者数の動向/日弁連と弁護士会の落日/法科大学院総定員数の削減/削減すればよいのか?/国家は弁護士に何を求めるのか?/「法の支配」と弁護士/三権の一翼の担い手/弁護士とは何か?

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